高田崇史Official Web Site -club TAKATAKAT

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ESSAY

『QED 天河伝説、桜舞い』

今年は午年なので、奈良県吉野・丹生川上神社下社の神馬、

「白ちゃん・黒ちゃん」の写真から。

ということで、今回の『QED』の舞台は吉野です。

吉野と言えば、やはり「桜」を思い浮かべるでしょう。

山一面に三万本ともいわれる桜が植えられ、

しかも、麓から頂上まで標高差があるため、

長い間にわたって桜を愛でることができるという、

実に素晴らしい観光地です。

しかし、ここで「桜」と言えば梶井基次郎の、

「桜の樹の下には屍体が埋まっている」

「これは信じていいことなんだよ」

という有名な文言を思い浮かべる方も多いかと思われます。

こちらは絶妙な比喩ですが、

吉野に限っては、本当に無数の遺体の上に

桜の花が咲き誇っていると言っても過言ではありません。

遥か天武天皇の頃から、奈良、鎌倉、そして南北朝と

激しい戦いが延々と繰り広げられてきました。

中でもやはり、鎌倉から南北朝時代の戦いは激しく、

何万(一説では何十万)という人々が

吉野の山で命を落としています。

そんな吉野山から数キロ南に下った場所に、

今回の舞台である天河大弁財天社が鎮座しています。

内田康夫さんの『天河伝説殺人事件』で全国的に有名になり、

奈良県最強のパワースポットの1つとも呼ばれ、

それ以来、多くの方々が足を運び、

その御利益にあやかりたいと願っている社です。

社の近くには、かの在原業平の墓所も存在します。

業平は、自ら望んでこの地で没したといいます。

そして。

この社には、また一つ奇妙な伝承が残っています。

それは、能の大成者である世阿弥をして、

父・観阿弥や自分をも超える才能の持ち主と認めた、

嫡男の元雅という能楽師にまつわる話です。

その元雅が、まだ南北朝の戦乱治まらぬ中、

天河大弁財天社を訪れ、能を舞って奉納しました。

しかし、その約2年後に、

伊勢の地において暗殺されてしまいます。

しかも、それに止まらず更にその2年後、

世阿弥自身も佐渡に流されてしまいました。

彼らは一介の「能楽師」なのに、暗殺、流罪、

全く以て不可解です。

これは一体、どういうことだったのでしょうか。

そこにはどんな歴史の秘密が隠されているのか。

しかし世阿弥はその答えを、

非常に有名な自分の作品の中に「暗号」で書き残していました。

では、それは一体どんな「暗号」だったのか――。

そんな「謎」を桑原崇と棚旗奈々、そして小松崎良平が

天川村に足を運んで、追います。

また、南朝最大の忠臣と称される楠木正成が、

実は湊川で命を落としていないことは以前に少し書きましたが、

今回は彼の子である正行・正儀も絡めて書きました。

そして巻末には、崇と小学生の大地くんが語り合う、

「桑原崇の鬼学入門」が収載されています。

鬼とは一体何なのかを、

崇が小学生相手に例に延々と語り倒します(笑)

節分も近いことですし、ぜひお目通しいただき、

色々と再確認(?)していただければと思います。

ではでは、みなさまも

天河大弁財天社の御利益がありますよう。

そして、この作品を楽しんでいただけますよう、

心から祈り上げます。