-
『猿田彦の怨霊――小余綾俊輔の封印講義――』
今回のテーマは「猿田彦神」です。
そして小余綾俊輔シリーズなので陰惨な殺人事件は何も起こらず(笑)
1冊丸々「猿田彦神」を追いかけます。
みなさんは「猿田彦神」をご存知かと思います。
ご存じない方でも「天狗」は知っているでしょう。
赤ら顔、高い鼻、ザンバラの髪。
団扇を手に怪奇現象を起こす神です。
その「天狗」のモデルとされているのが、
今回のテーマの猿田彦神なのです。
その容貌の真偽はともかくとして、
それほど我々の身近に存在していた神なのに、
詳しく追っていくと、最後は今も、
「正体不明の神」とされています。
猿田彦神に関する色々な研究・著作に目を通しても、
誰もが「天孫・ニニギノミコトを先導した神」
あるいは「道開きの神」「導きの神」
としか書かれておらず、最終的には「正体不明の謎の神」で終わっているのです。
一体これはどうしたことなのでしょうか。
ニニギノミコトの前に姿を現しているにもかかわらず
どうしてそれほど不可解な神なのでしょうか。
やがて猿田彦神は天宇受売命と結婚して伊勢に向かい、
その地(にあるとされた)海に溺れて命を落としてしまいます。
しかしその後、天宇受売命は子々孫々まで朝廷から厚遇されました。
それは一体、何故?
言われてみれば、確かに「不可解」なことだらけです。
そんな謎に、例によって小余綾俊輔、加藤橙子、堀越誠也たち3人が挑みます。
そのきっかけは、橙子が奈良で見た「庚申参り(待ち)」でした。
「申」はもちろん「猿」です。
同時に「神」を表しています。
しかし「括り猿」や「見ざる・言わざる・聞かざる」や「弾き猿」
そして、江戸川柳などなで「猿」はかなり卑下されています。
どうして「猿」――「猿田彦神」が、これほど蔑視されているのでしょうか?
確かに「猿」には余り良いイメージがありません。
また「犬猿の仲」という言葉もあるように、
「猿」と「犬」は仲が悪いと言われてきました。
ところが「猿」と「犬」は等しい存在と考える地方も存在していました。
これは一体、どういうことなのか?
更に「庚申」にまつわる数々の謎の風習の意味は?
猿回しの起源とも言われている「厩に猿を飼うと縁起が良い」という意味の本質は?
そもそも「猿田彦大神」は、本当に「猿田彦」という名前だったのでしょうか。
それらの謎を追って行くと、我々日本人の根源にまでたどり着いてしまうのです。
これがおそらく、誰もが(特に朝廷側の人々が)
猿田彦神を「不可解な神」としておきたかった理由と思われます。
ぜひ皆さまも、小余綾俊輔や橙子たちと一緒に、
猿田彦神を追う旅にお出かけください。