-
『QED 恵比寿の漂流』
全く個人的な話から始まってしまうのですが、
この作品を書いている間に我が家の「庭猫」のグリ――、
本名(?)グリザベラが、あの世に旅立ちました。
ある日突然、素肌も見えるような悲惨な毛並みで
我が家の前に現れたため、妻がミュージカル「キャッツ」で、
やはりボロボロの容姿で「メモリー」を歌う
老猫「グリザベラ」と名づけ、
12年もの間、家の庭で暮らしていました。
本人(本猫)もおそらく悔いはないと思いますが、
ぼくとしては、かなり辛く、どうしてこんな時に
「血みどろ殺人事件」を書いているんだという(笑)
憂鬱で沈鬱な気持ちになってしまいました。
でもある夜、グリが笑っている、
(注:グリの笑っている顔は今まで見たことがない)
夢を見たので、何とか書き続けることができました。
人はこうして何度も悲しい体験を重ねながら、
「人」になって行くのだろうなあ……
と改めて感じてしまいました。
さて――。
そんな今回の『QED』の舞台は「対馬」です。
みなさんは「対馬」と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか。
九州の北西、対馬海峡に浮かぶ、南北に細長い島で、
日本の本土よりも韓国など他国に近い位置にある。
そのため、白村江の戦いや「元寇」、
更には日本海海戦などに巻き込まれ続けていました。
しかし『古事記』や『日本書紀』では、
国生み神話などの話の中で「最初に生まれた島」
の一つと位置づけられている重要な場所なのです。
そのためでしょう、
対馬には約130社もの神社が存在しています。
『延喜式』に記載されている神社だけでも、約30社。
ここに寺院を加えたら、更に膨大な数になってしまうでしょう。
その上、全国の八幡宮発祥の社といわれる「海神神社」
やはり全国の住吉神社発祥の社であるという「鴨居瀬住吉神社」。
竜宮城伝説を持ち、
全国でも珍しい「三柱鳥居」が二基も存在する「和多都美神社」。
それだけでなく、
日本で初めて建立された仏教寺院の「梅林寺」も存在しています。
ここにはもちろん、日本初上陸した仏像が祀られていました。
これだけでも、くらくらしてしまうのですが、
まだまだたくさんの興味深い寺社が存在しています。
まさに司馬遼太郎の言ったように、
「日本で対馬だけが異例で(後略)」
ということでしよう。
しかし、崇や奈々の旅はまず北九州から始まります。
門司港の「和布刈(めかり)神社」
福岡の「志賀海神社」
それらをまわって、ついに対馬へと向かいます。
しかしそこでは例によって、
陰惨な事件が崇や奈々たちを待ち受けていました。
ちなみに今回のあおり文句は、
「シリーズ最驚!」
だそうです。大きく出ました(笑)
しかし最後までお読みいただければ「QED史上最驚!」
(あるいは最強? 最凶?)
と銘打たれた文言の意味(シャレ)が、
お分かりになっていただけることと思います。
ぜひ皆さまも、崇や奈々たちと共に海峡を渡って、
対馬にご一緒いただければと願っております。