ESSAY
『古事記異聞──京の怨霊、元出雲』
7月6日に講談社ノベルスより、
『古事記異聞 京の怨霊、元出雲』
が上梓されました。
「出雲」を追いかけて橘樹雅は、
今回は京都に足を運びます。
「出雲」なのに、なぜ京都?
と思われる方も多いと思いますが、
題名のように、京都には「元出雲」と呼ばれる、
由緒正しい神社が鎮座しています。
保津川下りで有名な亀岡に坐す、
元出雲・出雲大神宮です。
実際に江戸時代末期頃まで「出雲大社」といえば、
この大神宮のことを指していたといいます。
(島根の出雲大社は「杵築大社」と呼ばれていました)
そして「元出雲」と呼ばれているからには当然、
現在の出雲大社より古くから存在していたことになります。
京都市内にはその他にも、
怨霊の寺と呼ばれた「出雲寺」を始めとして、
今も数多くの「出雲」が存在しています。
まるで「出雲国」がそこにあったようですが、
そんなわけもありません。
では、どうしてそんなに地名が残っているのか?
しかもその場所の多くは、上賀茂・下鴨神社近辺です。
賀茂氏といえば、熊野の神の八咫烏。
その賀茂氏が「出雲」のそばにいる?
何故、彼らと関わりがあるのでしょう。
今回は、そんな大きな謎を橘樹雅が追います。
非常に頼りない彼女ですが、
京都では、水野研究室大先輩の民俗学研究家、
金澤千鶴子という、強力な助っ人と巡り会うことができました。
彼女のアドバイスによって、
雅はさまざまな「出雲」をまわるのですが、
果たして、無事に謎が解けたでしょうか……?
現在、世間は旅行もままならぬ逼塞した状況ですので、
みなさまには、せめて作品の中だけでも春の京都
(今回はいつもにも増してディープな京都)
を旅していただければと、心より願っています。
それでは、良い旅を!